遺言書を作るときの3つの方法

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遺言は、人生最後の意思表示として、自分の遺産や財産について明確な指示を残すことが出来る制度です。
遺言書を作成しておくことで自分の死後に、対象者や分配の方法を明確に示すことが出来ます。そのため、家族や親族などの相続人が争うことを防ぎ、紛争を未然に防止することができます。
ここでは有効な遺言書を作成するための基本として、遺言書の種類と特徴を紹介します。

遺言とは

遺言は、個人が自身の死後に財産の配分、遺産の処理、埋葬方法、後見人の指定など、さまざまな事柄について指示する文書のことです。遺言は、法的に有効である限り、個人の最後の意思や希望を尊重し、その財産や関連事項を適切に処理するためのガイドラインとなります。

では、遺言を残さなかった場合には、財産の分配などはどのように行われるのでしょうか。

遺言が無い時は法定相続分に沿って分配されることになります。
例えば、相続人が子供二人と配偶者ならば1/4、1/4、2/4となります。これだけ見れば妥当な分配に見えて遺言の必要性が薄く見えてしまいますが、実際に相続が発生すると親の面倒を見てきた子供がその分(寄与分)の増額を主張したり、住居などの不動産の共有など遺産分割の協議で紛糾しスムーズに相続が進まないばかりか、親族間の不仲などの争続に発展してしまうことが多々あるのです。

遺言の種類

「遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。」(民法967条)と方式について明確にルールを定めています、したがってこの3つの方法に従ってした遺言でなければ法的な効力は無いと言う事になります。ただし、争いになった時に法的に従わせるための効力であって、日常会話であろうが動画であろうが亡くなる前の本人の意思が相続人に伝わり、相続人がその意思を十分に尊重し皆で納得した上で遺産分割することは何の問題もありません。これが一番理想的な姿ではあると思います。

ちなみに、特別の方式とは病気や船舶の遭難時などの死亡の危機に迫った場合のことです、かなりイレギュラーな場合ですのでここでは触れません。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言書

遺言者自身で日付と氏名を含む全文を手書きして押印し作成する遺言書の事です。
自分で作成するため、費用などは不要ですが、書き方の過ちや保管しておく場所によっては行方不明になる恐れなどがあります。
行方不明にならないよう信頼の出来る人に預けるなどの対策を取ってください。
相続時には相続人等の関係者が家庭裁判所に提出して検認してもらう必要があり、検認には1か月程度の日数がかかります。また、封印してある遺言書を勝手に開封すると罰があります。

公正証書遺言とは

公正証書遺言書

公証人に加え証人2名以上が立ち合い、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口述し公証人がその内容を記述して遺言者と証人2名が確認し各自署名押印して作成します。
原本と別に正本および謄本が作成されて、原本は公証役場で保管され正本と謄本が遺言者に交付されるので、遺言者ともう一名でどちらかを保管することになります。
相続が発生したら、自筆証書遺言書とは違い家庭裁判所での検認手続は不要で正本、謄本どちらでも遺言の執行が可能です。

財産の額や内容に応じて公証役場での手数料が必要です。
例)500万を超え1,000万以下の時17,000円、1,000万を超え3,000万以下の時23,000円
手数料以外にも証人への謝礼も考えておく必要があります。

秘密証書遺言書

秘密証書遺言書

公証人と証人2名以上で遺言の内容自体は分からないが、この証書が遺言書であることは証明してもらう方式。
遺言者が遺言書に署名、押印し、その遺言書を自ら封印して遺言書に押したのと同一の印鑑で封印して、公証人および証人に遺言書として提出し、住所氏名を申述する。
公証人がその遺言書が提出された日付と申述を封紙に記載し後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押し遺言者へ渡される。
自筆証書遺言書と同様に自分で管理することになるため、信頼の出来る人に預けるなど保管方法を考える必要があり、相続発生時には家庭裁判所での検認の手続きも必要です。

公証役場への一律11,000円の手数料が必要です。


※後述する法務局での自筆証書遺言書保管制度によりもっと安価に保管までしてもらえることとなったため秘密証書遺言書を選択するメリットはなくなった気がします。

自筆証書遺言書保管制度について

自筆証書遺言書の大きな弱点であった、遺言書が行方不明になったり、改ざんを疑われるなどの部分を大きく補う法務局による自筆証書遺言書保管制度が2020年7月より開始されました。

制度開始前制度開始後
自分で管理法務局で管理
・遺言書が紛失・亡失する恐れがある
・相続人より廃棄、隠匿、改ざんされるおそれがある
・家庭裁判所での検認手続きが必要
・遺言書の保存場所がはっきりしている
・改ざんの恐れがない
・家庭裁判所で検認を受ける必要がない

保管の流れ

遺言の作成
自筆証書遺言書を作成します。
必要な項目すべて自署しているかや日付等の必要項目が記載されているかなどの外形的な確認は申請時に行ってもらえますが、内容についてのアドバイスは受けることは出来ません。
保管場所を選定する
住所地、本籍地または不動産の所在地のいづれかを管轄する遺言書保管場所から選びます。

熊本県の遺言書保管場所

官署管轄区域電話番号
熊本地方法務局
供託課
熊本市、上益城郡096-364-2145
宇土支局宇土市、宇城市、下益城郡0964-22-0320
玉名支局荒尾市、玉名市、玉名郡0968-72-2347
山鹿支局山鹿市0968-44-2411
阿蘇大津支局菊池市、阿蘇市、合志市、
菊池郡、阿蘇郡
096-293-2272
八代支局八代市、水俣市、八代郡、葦北郡0965-32-2654
人吉支局人吉市、球磨郡0966-22-3393
天草支局上天草市、天草市、天草郡0969-22-2467
申請書を作成
申請書に必要事項を記入します。
申請書関係のフォームはこちらから https://www.moj.go.jp/MINJI/06.html
法務局へ予約
ネット、電話、窓口の3通りあります。予約日は翌日以降30日先まで可能
・ネットでの予約はこちらからhttps://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu-cpph-u/reserve/offerList_initDisplay
・電話での予約は上記の遺言書保管場所一覧の電話へ

予約画面イメージ

保管の申請
以下の必要書類を持って遺言者本人が直接窓口に出向く必要があります。
1.遺言書(記載内容に無理がないかなどの内容面の確認を事前に専門家にアドバイスしてもらうようお勧めします)
2.申請書
3.住民票(3か月以内)本籍及び筆頭者の記載入り
4.本人確認資料(マイナンバーカード、運転免許証等)
5.手数料1通につき3,900円
保管証の受取
手続終了後,「保管証」を受け取ります。
保管証には,遺言者の氏名,出生の年月日,手続を行った遺言書保管所の名称及び保管番号が記載されていて再発行は出来ませんので大切に保管してください。
保管証を持ち帰ったら、家族などに保管証のコピーを渡すなどしておくといざという時安心です。
保管番号が知れても遺言書の閲覧、保管の撤回等にはマイナンバー等の顔写真付きの本人確認書類が必要ですので内容を知られてしまう心配はありません。

自筆証書遺言書保管制度の機能まとめ

自筆証書遺言書保管制度の機能をまとめると以下のようになります。

【遺言をする人が使う機能】

機能内容法務局手数料
保管上で説明した内容です。1通3,900円
閲覧遺言者が預けた遺言書を保管場所(モニター閲覧はどこでも、原本閲覧は預けた保管場所)で閲覧することが出来る。モニター閲覧1,400円
原本閲覧1,700円
撤回遺言者が預けた遺言書を預けた保管場所で返してもらうことが出来る。無料
変更遺言者が本人、推定相続人の氏名・住所に変更があった時に届出け出る。無料

【相続人等が使う機能(遺言者が亡くなられている場合のみ)】

機能内容法務局手数料
遺言書事実保管証明特定の遺言者の自分を相続人や受遺者又は遺言執行者等とする遺言が保管されているか否かの確認が出来ます。保管されている場合、入手した証明書により次行の遺言内容確認の請求が出来る事となります。どこの保管所からでも請求可能です。1通800円
遺言書情報証明相続人等が保管所に保管されている遺言書の内容を確認するために、遺言書情報証明書の交付の請求が出来ます。どこの保管所からでも請求可能です。また、証明書を受け取ると他の相続人へ保管していることの通知が行われます。1通1,400円
遺言書の閲覧相続人等が保管所に保管されている遺言書の内容を遺言者が預けた遺言書を保管場所(モニター閲覧はどこでも、原本閲覧は預けた保管場所)で閲覧することが出来ます。
また、閲覧すると他の相続人へ保管していることの通知が行われます。
モニター閲覧1,400円
原本閲覧1,700円

まとめ

遺言は法律で定められた3通りの方法で行わないと、法的な強制力のある遺言とはならない訳ですが、具体的にどの方法を選択すれば良いのかと悩んだ時の選択肢としては、法務局での保管制度利用を前提にすれば費用や手続きの簡単さを優先すれば自筆証書遺言、より厳密に確実に行いたいのであれば公正証書遺言になると思います。

どちらの方法であろうとも遺言の内容については自分の意思をしっかりと書くことが重要です。
しかし、その内容によっては相続発生時に内容通りに実行されない場合もあります。
残念なことに、その場に自分はいません、残った家族のことを思えば遺言内容について専門家にアドバイスをもらうことも検討した方がよいように思います。また、相続を託す信頼できる者をだれか決めて依頼しておくと安心です。

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