遺贈とは
遺言によって被相続人(遺言者)が他人(受遺者)へ自分の財産を与える行為のことをいいます。
相続の場合、相手は法定相続人になりますが、遺贈の場合では相手は他人(法定相続人含む)、法人など誰にたいしても可能です。
例:内縁関係の妻、甥や姪などへ遺言によって財産を与える行為
遺贈の種類
包括遺贈
包括遺贈とは特定の遺産を指定するのではなく、遺産の全部(100%)または一定割合(50%や1/4など)を受遺者へ与えることをいいます。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされていて負債に対する責任も割合に応じて負う事となります。
他にも相続人と同様に、遺贈の承認方法として単純承認、限定承認、放棄ができ、遺産分割時には相続人と同じ立場で分割協議に参加することとなります。また、遺贈された部分は遺留分侵害額請求権の対象となりますが、代襲制度や遺留分などはありません。
特定遺贈
特定遺贈とは特定の遺産を指定して受遺者へ与えることをいいます。(特定の不動産や預貯金や現金などのように種類の指定など)
条件付き遺贈
遺言で「○○試験に合格したら贈る..」のような停止条件を付けた時は遺言者の死亡後に条件が成就したときに効力が発生します。死亡時には既に試験合格していたなど条件が成立していた時は死亡時から有効となります。
負担付き遺贈
「残された妻の介護を条件とする」のように遺贈者は受遺者に一定の負担の義務を果たすことを条件として遺贈することができます。
一定の負担に関わる価額が遺贈の対象の額を超える時には、その額の範囲内で義務を果たせばよいことになります。
また、負担付き遺贈を受けた者が負担すべき義務を果たさないときには、相続人の一人が義務を果たすよう催促し、一定の期間内に果たさなければ、負担付き遺贈の取り消しを家庭裁判所に請求することが出来ます。
受遺者の条件
遺贈は親族関係にない第三者であっても問題ありません、また法人などにたいしても出来ます。
ただし、遺言が効力を発生した時点で存在していなくてはならないため、すでに死亡していたり、法人であれば解散していたりして存在しない場合は遺贈は無効となってしまいます。
受遺者が胎児の場合には既に生まれたものとされます。(死産の場合は適用外)
また、相続人の欠格事由(遺産目的の犯罪行為)についても法律が準用され、該当する場合は遺贈を受ける事は出来なくなります。
遺贈の承認・放棄
遺言で遺贈を受けた受遺者はいつでも遺贈を放棄でき、放棄すれば遺言者の死亡時点から放棄した事になります。ただし、包括遺贈の場合は3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述を行う必要があります。
遺贈義務者(相続人などで遺贈の履行義務を負う者)、その他の利害関係人は受遺者に対して遺贈を受けるのか放棄するかをはっきりするように催促することが出来ます、一定期間に明確な回答が無ければ、その遺贈を承認したとみなされます。
また、一旦表明した遺贈の承認・放棄は取り消すことは出来ませんが、脅迫や詐欺などによる場合は一定期間であれば取り消すことが出来ます。
遺贈の無効
遺贈の無効条件
遺贈は遺言者が死亡して遺言が有効となった時点で、受遺者が死亡していた時は無効となります。
また、停止条件付きの遺贈についても、受遺者が条件が整う前に死亡した時には無効となります。無効としないためには、受遺者死亡のリスクも考えて、遺言書にその場合の扱いも書いておくと安心です。
遺贈の目的の権利が遺言者の死亡時点で相続財産に含まれていなかった場合にも無効となりますが、相続財産内になくても遺贈する意思が明確なら遺贈義務者はその遺贈の目的物の権利を取得して受遺者に引き渡す義務があります。(自分が死んだら孫に最後のプレゼントとして車を買ってやってほしいなど)
無効時の財産の行方
遺贈が無効になった場合や放棄された場合には、遺贈される予定だった財産は相続人に帰属する事となります。
遺贈の効果
権利移転のタイミング
特定遺贈の場合は遺言者が死亡した時から特定の遺産について受遺者が権利を取得します。
包括遺贈の場合で遺産の全部(100%)を遺贈された場合は遺言者死亡時に権利を取得しますが、一定割合(50%や1/4など)の遺贈では遺産の分割により具体的な財産が明確になって初めて権利を取得することになります。
不動産の対抗要件
遺贈によって不動産を取得した時の登記は、受遺者と相続人で共同で行う必要があります。
相続人の協力が得にくい事もあると思われますので、遺言書で遺言執行者を指名しておけば受遺者と遺言執行者のみで登記することが出来ます。
また、遺贈で入手した不動産は第三者に差し押さえられた場合には対抗出来なくなるため早めに登記するように注意してください。
まとめ
遺言を残す事で、法定相続人でない任意の人にも財産を譲り渡すことが出来るようになります。但し、遺言は法律に決められた様式の遺言書でする必要があります。
内縁関係にある人がいたり、献身的に尽くしてくれる人がいて自分の財産を譲りたいという思いがあるなら、早めに遺言書を作成しておくことです。
遺言書が無ければ、いくら生前に口頭で財産はあなたに渡すからと言っていたとしても、結局は法定相続人が相続することになるでしょう。
残された相手のことを思い、自分の財産を最も望ましい相手に譲り渡すためには、正しい様式で遺言書を残す事をご検討ください。
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