<改正の目的>
2024年1月から本格的に運用開始される改正電子帳簿保存法(2022年1月施行済)により、なにが出来るのか、または、何をしないといけないのかを調べてみました。
*なお、何をしないといけないのかにあたる部分の、電子取引データを電子保存しなければならない部分は2023年12月までは従来通り紙に出力して保存する方法でも認められることとなっています。
電子帳簿保存法は1998年から何度かの改正を得て施行されて来ましたが、税務署長の事前承認が必要など使い勝手の面であまり活用されてこなかった経緯があり、今回の改正では一定の要件を満たせば、税務署長の事前承認なしで国税関係の帳簿・書類の電子保存が認められるようになりました。紙での保存から電子データによる保存を普及させビジネスにおけるデジタル化を進めるための改正と言えます。
<対象帳票>
保存が義務づけられている帳簿・帳票のには以下のようなものがあります。
1.国税関係帳簿
例)・総勘定元帳
・仕訳帳
・現金出納帳
・売掛・買掛元帳
・固定資産台帳
2.国税関係書類
例)・棚卸表
・貸借対照表
・損益計算書
・注文書
・契約書
・領収書
<保存の必要な期間>
※会社法432条
・決算書(貸借対照表、損益計算書など)、帳簿(総勘定元帳、各種補助簿など) 10年
※法人税法 施行規則59条
・取引に関する帳簿(仕訳帳、現金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳など) 7年
・決算関係書類(会社法で10年保存が義務づけられているもの以外) 7年
・現金や預貯金に関する伝票、書類(領収書、預金通帳、小切手、手形控など) 7年
・請求書、注文請書、契約書、見積書、仕入伝票など 7年
・有価証券の取引に関連した書類 7年
・伝票(現預金以外) 5年
かなりの会社、事業者は、これだけの帳簿・帳票を紙で保存されていることと思います。おそらく帳票の種類ごとに保存年限を管理せず「一律10年保存とする」などの対応とされている事業者様も多いのではないでしょうか。また、そのためにかなりの場所を保管用に占領されていることでしょう。
今回の改正は、ITの活用でこれらの不便を解消し、生産性を向上させることを目指し、平成10年に施行されていた電子帳簿保存法を大幅に見直したものとなります。
<改正点>
今回の主な改正点を3つの事務の流れに分けてルール化されています。
①電子帳簿等保存
「システムで電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存」することです。独自システムや会計ソフト等で作成した対象帳票のデータをそのまま保存すること事です。一定の要件を満たせば、税務署への事前承認の必要なくデータ保存が出来る事となります。おそらく現在は、データの保存+紙に出力した帳簿の保存もされている事業者様も多いと思われますが、その場合であればデータのみ保存すれば紙帳票の保存が不要になり紙の保管場所に困っている事業者様にはありがたい改正と言えますので。ぜひ活用を検討してはいかがでしょうか。一定の要件等は別の記事で述べたいと思います。
②スキャナ保存
「紙で受領・作成した書類を画像データで保存」することです。具体的にいうと、相手から受け取った請求書や領収書または、相手に交付する請求書や領収書などの各税法で保存が義務付けられている書類を、スキャナで読み取り電子データ化して保存することです。一定の要件を満たせば特別な手続き(税務書への届など)を必要とせず始めることが出来ます。①と同じく紙の保管が不要になるメリットがあります。
③電子取引データ保存
「電子的に授受した取引情報をデータで保存」することです。具体的には、相手とやり取りする請求書や領収書といったように、紙でやりとりしていた場合にはその紙を保存しなければならない内容をデータでやりとりした場合には「電子取引」に該当し、そのデータを保存しなければならないというものです。
この部分が今回の改正が事業者に与える影響としてはもっとも大きい部分ではないでしょうか。おそらく今現在、データでやり取りした請求書や領収書等については印刷したものをファイリングして元データについては特に保存等行っていない事業者が大半ではないでしょうか。①、②は電子データ化の恩恵を受ける気がなければ、今まで通り紙で保存するやり方を続ければ済みますが、この③に関しては請求書等をデータでやり取りする可能性がある事業者(今の時代ほぼすべての事業者と思われる)であれば必ず対応する必要が出てくる部分です。その影響の大きさから2024年12月31日までは2年間を宥恕期間(やむを得ない場合許しましょう)とすることになりました。
具体的な対策等は別の記事で述べたいと思います。
<まとめ>
今回の電子帳簿保存法の改正(2022年1月1日施行)の目的は「経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上等に資するため」となっています。日本経済の生産性向上のためにITツールの導入などによる事務手続きの効率化を進めるため、国も中小企業などへの補助金による支援策を講じています。事業者の皆様は、今回の改正を機に事務手続きの見直しやITツールの導入などを検討してみてはいかがでしょうか。
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